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1990年代のアメリカは未曾有の好景気に沸いた。それを支えていたのがハイテク関連株、特にインターネット銘柄である。1995年8月にネットスケープが新規株を公開して以来、ネット株は軒並み高騰した。この史上最長の強気市場に対しては楽観論も唱えられている。インターネットは私たちの社会を比類なきスピードと規模で変革しつつあるため、もはや伝統的な景気変動は当てはまらず、今後数十年は好景気が続くという「ロングブーム」説だ。しかし、本書では株式時価総額が1億ドル以上の企業133社を対象にした試算からネット株の高騰を「バブル」と断定し、一般投資家に警告する。すなわち「インターネットは確かに現実だが、株価は現実離れしている」と。
ただし、本書は単なるバブル批判書ではない。著者はシリコンバレーの世界的ハイテクビジネス誌「レッド・ヘリング」の編集者であるパーキンス兄弟。マイクロソフトのビル・ゲイツ、アマゾンのジェフ・ベゾス、ヤフーのジェリー・ヤンをはじめ、ネットビジネス界に膨大な人脈を持つ事情通だ。この本の一番の魅力は、ネットビジネスのインサイダーたち―― ベンチャーキャピタリストや投資銀行―― にスポットが当てられていることである。ネットビジネスに限らず、アメリカ経済のキープレイヤーである彼らの内情をここまで描いた本はないだろう。また、自動車やPC、バイオテクノロジーなどの黎明期を引き合いに出し、バブルはアメリカに新しい市場が現れたときに起こるゴールドラッシュのような必然的現象だと指摘する点も興味深い。IT革命が声高に叫ばれ始めた1999年に、日本のインターネット株も高騰した。監訳者である斎藤精一郎のあとがきにあるとおり、期待先行の日本のネットバブルはアメリカの投影に過ぎない。アメリカのそれがいずれ崩壊するとすれば、日本経済も無関係でいられないのは明らかだ。投資家は言うまでもなく、来るべきIT時代に備えるためにぜひ読んでおきたい1冊である。(斎藤聡海)
経済の素人と気鋭の経済学者による、「経済とは何だ」というテーマについての対談集である。素人側には「だんご三兄弟」「ポリンキー」などを手がけた広告クリエーターの佐藤雅彦氏。学者側には大蔵省、ハーバード大学などを経て、現在は慶応大学教授の竹中平蔵氏。対談形式という気軽さも手伝って、経済に無縁の人でも十分に読みこなせる1冊となっている。
何と言っても、聞き手は広告業界で一流の人である。短時間に大切なメッセージをいかにわかりやすく伝えるかを追求するプロフェッショナル。そんな佐藤氏の質問は、シンプルかつコンパクトでありながら、ぐいぐいと事の真髄に迫っていく。対する竹中氏は、たとえ話を織り交ぜながら、明快に答えている。
「お金って何?」という素朴な疑問から始まる第1章「お金の正体」を読むだけで、読者は「経済」をぐっと身近に感じるだろう。第3章「払うのか、取られるのか」は税金の話である。多くの日本人(特にサラリーマン)にとって実感の薄い税金こそが、民主主義の根幹をなすものだと改めて教えられる。第4章「何がアメリカをそうさせる」は、経済のみならず文化、歴史的背景を掘り下げており、アメリカ文化の影響下にある日本人には興味をそそられる話題である。
この本の特異性は、経済という硬いテーマを扱いながら、エンターテイメントとしても楽しませてくれることだ。「世界で最初の株式会社とは?」のような、雑学的話題もあるので、会話のネタ本としてもおすすめ。ちなみに、正解は東インド会社。(齋藤聡海)
本の帯に「会計がわからんで経営ができるか!」と印刷されている。
会計というとつい「勘定が合えばそれで良い」「会計は専門に勉強した特定の者にしか理解できない」という感覚にとらわれてしまう。特に経営者は「利益追求=売上追求」と考えてしまい、会計をおざなりにしてしまいがちなのではないだろうか。そこを著者は自身の経験からなる「経営学」と「会計学」を結びつけてわかりやすく説明している。
経営に役立つ会計とはどうあるべきか。事業を安定軌道に乗せようと思うのなら、数字に明るく、しかも「安定性」を持続する会計でなくてはならない。安定は、「儲け」のなかから出てくるということも覚えておく必要がある。「儲け」るためにはどうすればいいのか。
その答えを導き出した著者が「なぜ」という言葉に徹底的にこだわり、追求する人だということが、この本を読み進めていくうちによくわかってくる。「簿外処理は一切許さない」「ディスクロージャーを徹底する」という一見当たり前の議論ながら、そこはさすがカリスマ性に富んだ著者。具体例を交えての論述には説得力がある。
「経営のための経理である」という「実学」は、経理を専門に勉強してきた人にとっては「目から鱗」の思いをするだろう。会計学とは経営哲学と完全に合致する理原則であることをあらためて認識させられる。(大高真子)
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