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日常的にごく当たり前に使う「歴史」という言葉。誰もが興味を持ち、知りたがっているが、あらためて考えてみればその実体は霞のようにとらえ難いのが歴史の本性だろう。研究の手法は科学のようでいて、叙述という形式は文学的でもある。そもそも、歴史とは何なのか。そして、本当に歴史に真実はあるのか。特に専門家にとって、これらは影のようにつきまとう難題に違いない。
こうした歴史の根本的なあり方について、「人間・社会・国家」を枠組みに据えて考察したのが本書である。『イスラームと国際政治』などで知られる博学の歴史学者、山内昌之の問題意識は主に3点だ。第一は「人間の営みは歴史のプロセスの前で無力なままに消え去るだけにすぎないの」かということ。つまり、歴史学の存在意義について。第二は「歴史は科学なのか、それとも文学なのか」。第三は「歴史と現実政治との関わりについて自分の理解を整理すること」。
著者自らが「永遠に答えの出ない大きな問い」と語っているように、本書で断定的な答えは得られない。しかし、ヘロドトスや司馬遷をはじめ、「歴史学の父」イブン・ハルドゥーン、ギボン、内藤湖南、吉田松陰など、古今東西約200人の歴史家の例を引用し、一連の営みをひも解く過程は含蓄と示唆に富んでいる。専門家の姿勢を問う内容だけあって難解かもしれないが、多くの史料を厳密に引用して語られる本書はその文体も含めて、歴史の作法と本質を学べる真摯な1冊である。(齋藤聡海)
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